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現状回復コラム

第十回 特約が成立する条件とは?

●3つの要件を満たしていれば特約は成立する

 これまで、原状回復の基本ルールについて解説してきました。時間とともに、自然に損耗するものや、次の入居者を確保するための化粧直しやグレードアップは大家さんの負担、入居者が故意・過失や不適切な使い方で傷つけたもの、原因そのものは入居者の責任ではないものの、その後の不適切な使い方から損耗が激しくなったものは入居者の負担というのが原則でした。

 この原則とは異なる、当事者間の特別の合意、約束、特別な条件を付した約束として、特約があります。具体的には原状回復の原則を超えた負担を借主に求める内容が特約とされていることが大半です。

 具体的には退去時のハウスクリーニングや消毒費用、畳替え、壁や床の張替えなどを特約として定めている契約書が多いようですが、これらは今後も存続するのでしょうか?

 結論からすると、長期的には分からないものの、短期的には存続します。ただし、一方的に特約を盛り込むだけではいけないというルールが作られつつあります。

 では、こんな要件を満たしていれば、特約は認められるのでしょうか?その要件は

1.特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること

2.賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること

3.賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること

 つまり「原状回復はすべて賃借人の負担」などといった、一方的、暴利的でない特約で、しかも、借りる人が負担が通常より重いこと、それでも払いますと言っていることが大事というわけです。

 この基本原則は国土交通省のガイドラインが定めているものですが、東京都ではさらに一歩進んで、重要事項説明を行う際に、これから結ばれる特約が原状回復の原則よりどのくらい重い負担になっているのかを説明することを義務付けています。

●消費者契約法と特約、これからの動きに注意を

 本来、契約は双方が納得して署名・押印していれば、その内容がどうであれ、それが成立するというのが原則です。ただ、これまで賃貸借契約では借りる人の立場が一方的に弱かったという経緯があり、国土交通省も東京ともそれを是正するためのルールを作ろうとしているわけです。

 その意味では国土交通省も東京都も特約自体を違法とはしていません。必要な要件を満たしていれば、成り立つとしています。

 ところが、ここにもうひとつの動きがあります。それは平成13年4月1日から施行された消費者契約法との関係です。これは消費者が事業者との間で締結する契約でのトラブルを解決することを目的に施行されたものですが、これに基づいて特約は無効とした判例が出されているのです。

 昨年には大阪高裁で契約書に「自然に生じた汚れも借主の負担」とする特約に対し、「消費者契約法に反し無効」とする判決が下されています。この契約自体は消費者契約法施行前に交わされたものですが、大阪高裁は「契約の更新でも消費者契約法は適用できる」との判断を示しました。

 また、今年2月には堺簡裁が敷引契約条項を消費者契約法10条に該当し、無効と判断しています。

 ただ、これらの判決は裁判官によって異なる部分もあり、司法の現場での判断はまだ固まっていないというのが現実。今後、どのような流れになっていくのかによって、特約が存続するかどうかは微妙なところもあるといえそうです。

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