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現状回復コラム

第十一回 関西で行われている敷引き特約は有効?無効?

●消費者契約法に違反するとする判決が出始めている

 原状回復の原資とする資金の名称、扱いは地域によって異なります。首都圏では敷金として入居時に家賃の2ヶ月分などの家賃を預かり、それを充てるやり方が一般的ですが、関西では敷引きという方法が一般的です。

 これは契約の時点で、保証金(首都圏での敷金に該当する)から一定額を引いて返還することを約する特約(敷引き特約)を付加しておくもの。あらかじめ、いくら支払うことになるかが分かっているのが特徴で、そのため、首都圏でのやり方より、トラブルになりにくいと言われていました。

 しかし、この慣習にも疑問の声が上がり始めています。最初に出された判例は堺簡裁のものです。平成17年2月に判決が言い渡され、入居者が勝訴、その後、大家さんが地裁に控訴。裁判は継続中です。

 裁判のあらましは以下の通りです。

入居者は平成13年8月に入居、平成16年6月に退去しています。家賃は当初8万3000円で、途中で8万5000円に値上げされています。共益費は1万円で、駐車場代は1万1550円(保証金3万3000円)でした。

契約時の敷引き特約では敷金は60万円で、そのうち、約83%強にあたる50万円を敷引きとして支払うことを約していました。

これに対して入居者は敷金50万円と駐車場の保証金3万3000円の返還を請求して裁判を起こしました。

判決は平成17年2月に言い渡されましたが、内容は入居者の要求をすべて認容したものになっています。

判決は敷引き特約を消費者契約法10条に反し、無効と判断しました。その理由としては
・敷金の約83%という敷引きの内容は入居者にとって不当に不利であること認められること
・敷引特約が一般的に行われている現状下では、入居者はこれを削除した契約を要求するなどが事実上極めて困難であると認められること、しかし、敷引き条項を承知、納得して契約したと認められる証拠はないこと

が挙げられています。

●不当ではないが、期間の長短に関わらない高額・高率の敷引きは無効

 さらに、平成17年4月には大阪地裁でも敷引きは一部無効との判決が出されています。この裁判のあらましは

入居者は平成15年6月に入居、約11カ月居住の上、退去しています。賃料は7万円で共益費は1万円。敷金として50万円を差し入れ、敷引き特約では40万円を控除、残りの10万円だけを返還するものとなっていました。

入居者はこの条項は消費者契約法10条に違反し、無効であると訴えを提起、一部損耗については負担するとした上で保証金41万円余を返還してほしいとしていました。

判決は
・原状回復の原資に充てられる額が妥当で、それを考慮して賃料が適正に抑えられている限り、敷引特約自体が不当とはいえない。
・ただし、引かれる額が80%にも及び、しかも、入居期間の長短に関わらず一律であることは入居者に過度の負担を強いているものと考えられ、消費者契約法10条に違反し、無効である。
・同水準の部屋の通常損耗を修繕する費用としては10万円が適当であり、その他、入居者に責任のある修繕費用を勘案し、入居者には32万円余を返還すべし。

というものでした。この判決は地裁レベルでは初めて、一部とはいえ、敷引きが消費者契約法の違反するものであるとしたことに大きな意味があります。

 つまり、敷引き全体が無効とは言えないものの、それが80%に及ぶような過度な負担である場合には、無効となりうる可能性があるということです。今後、この特約を利用する場合には、入居者にフェアと思われるような割合、数字を提示する必要が出てくるのかもしれません。

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