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現状回復コラム

第十二回 原状回復を巡る判例の動向1

●損耗が通常の使用を超えているか、特約は有効か、争点はこの2つ

 原状回復を巡っては過去20余件の判例が出ています。争う金額が数万円から数十万円という場合が多いため、裁判の舞台は大半が簡易裁判所となっていますが、最近では控訴によって、上級審でほ判例も出るようになっています。(訴訟の目的の額が90万円以下の場合は簡易裁判所が管轄、平成16年4月以降は上限が140万円に引き上げられた)。

 では、訴訟の具体的な内容ですが、争点は主に2つ。まずは、退去後に大家さんが行った修繕の対象となった損耗が、通常の使用によって生じた損耗を超えているかどうか。つまり、損耗の内容が、どちらの負担となるのが正しいのかという争点です。

 もうひとつは、損耗が通常の使用によって生ずる範囲であったとして、そこに特約があった場合、その特約によって、借りていた人が修繕義務、原状回復義務を負うべきかどうか。つまり、特約がどこまで有効かという争点です。

●自ら破損したと認めた以外は通常損耗とされることが多いものの……

 損耗の内容が通常の使用によるものか否か。この争点についての判例では、借りていた人が自ら破損等を認めた以外は通常の使用によるものとするケースが多いのですが、一部には通常の使用を超えるものとする例も出ています。大家さんとしては、どの程度が通常の使用を超えるもの、つまり、入居者に負担してもらえるものかは気になるところでしょう。具体的には壁ボードの穴や換気扇の焼け焦げ、ペット飼育可の部屋での消毒を代替するクリーニング費用、程度に応じてのペンキ剥がれ、クロス張替えなどが通常の使用を超えるとされています。

●包括的な特約は×、責任を限定した特約は◎というケースが中心

 特約によって、借りた人が原状回復義務を負うかどうかについては、その特約の内容、範囲によって差が出ています。賃貸開始時の状態に復して返却すべしというような、包括的で、借りている人に一方的に不利な特約に関しては否定されるのが一般的ですが、畳の表替え、カーペットのクリーニング費用など、内容を限定、しかもその負担があまり大きくない場合にには認められている場合もあります。これについては簡裁のみならず、上級審でも同様の傾向があり、すべてを借りていた人に負担させるという考えは否定されるものと考えていいでしょう。

 また、一定範囲の小修繕を借りている人負担とする修繕特約については大家さんの修繕義務を免除するだけのものであり、それを持って、入居していた人がすべてを負担するものではないと、制限的に解釈されていることが多いようです。

 次回以降は詳細に判例をご紹介します。また、こうした判例や基本的な考え方については「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(改訂版)に掲載されています。この冊子は国道交通省住宅局、財団法人不動産適正取引推進機構がまとめたものです。問い合わせは同機構調査研究部03-03435-8111です。

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