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さて、最後の原状回復のための費用を請求するにあたって貸主が根拠としたのは、修繕特約、賠償特約の2つです。まず、修繕特約は、建物専用部分についての畳、襖、障子その他の小修繕は入居者が行うものとするというもの。また賠償特約は一般的に故意過失を問わず、毀損、滅失、汚損その他の損害は入居者が損害賠償しなくてはいけないとするものです。
これに対して、裁判所は
@修繕特約は一定範囲の小修繕を入居者が行ってもいいと定めたものであり、修繕の義務を課したものではない。
A特約で毀損、汚損についての損害賠償義務を求めてあったとしても、その中には通常の使用によって生じた損耗は含まれないと解するべきである。
と判断。貸主が請求した箇所のうち、ドアについては通常の使用を越える損耗があったとして、支払いを命じたものの、それ以外は貸主負担としました。
判例では実際の損耗の程度が示されていないので、推察するしかないのですが、入居期間が8年と長期であってことを考えると、畳や襖、障子など、貸主が負担を求めた箇所は経年変化、自然損耗であったように思われます。その意味ではいたって妥当な判例であったというわけです。
なお、平成6年には、通常の使用による汚損、損耗は原状回復義務の対象とならない、原状回復とは「借りた時点の状況に復して返還することではない」と明言する判例も出ており(東京地裁)、いくら特約があったとしても、原状回復の範囲は限定されるという判断が定着しました。
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