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現状回復コラム

第十三回 原状回復を巡る判例の動向2
通常の使用を巡って(平成2年 名古屋地裁)

●通常の使用で損耗した部分は特約に定めがあっても負担する義務はない

 通常の使用をしていた場合の損耗は毀損、汚損等は損害賠償すべしと定めた特約があったとしても含まれないとする判例は平成2年と早い時期から出されています。最初の判例は名古屋地裁が下したものです。

 訴訟の内容ですが、賃貸契約が結ばれたのは昭和55年8月。契約が終了したのは昭和63年4月で、途中、相続で貸主が変わるなどはあったものの、契約自体には特に変わった点はありません。

 契約終了後、貸主が入居者に請求したのは、
@未払い賃料
A温水器の取替え費用
B原状回復のために実施した畳、襖、障子、クロスとジュータンの張替え費用、ドア・その枠のペンキ塗り替え費用
の3項目。

 未払い賃料は当然、入居者が支払うべしとされました。次の温水器ですが、これは長期の使用を前提とした設備と考えられるため、躯体の一部、貸主が取り替えるべきものと判断されました。耐用年数が長期にわたる設備に関しては貸主負担というわけです。

●修繕特約は借りた人に負担を強いるものではない

 さて、最後の原状回復のための費用を請求するにあたって貸主が根拠としたのは、修繕特約、賠償特約の2つです。まず、修繕特約は、建物専用部分についての畳、襖、障子その他の小修繕は入居者が行うものとするというもの。また賠償特約は一般的に故意過失を問わず、毀損、滅失、汚損その他の損害は入居者が損害賠償しなくてはいけないとするものです。

 これに対して、裁判所は
@修繕特約は一定範囲の小修繕を入居者が行ってもいいと定めたものであり、修繕の義務を課したものではない。
A特約で毀損、汚損についての損害賠償義務を求めてあったとしても、その中には通常の使用によって生じた損耗は含まれないと解するべきである。
 と判断。貸主が請求した箇所のうち、ドアについては通常の使用を越える損耗があったとして、支払いを命じたものの、それ以外は貸主負担としました。

 判例では実際の損耗の程度が示されていないので、推察するしかないのですが、入居期間が8年と長期であってことを考えると、畳や襖、障子など、貸主が負担を求めた箇所は経年変化、自然損耗であったように思われます。その意味ではいたって妥当な判例であったというわけです。

 なお、平成6年には、通常の使用による汚損、損耗は原状回復義務の対象とならない、原状回復とは「借りた時点の状況に復して返還することではない」と明言する判例も出ており(東京地裁)、いくら特約があったとしても、原状回復の範囲は限定されるという判断が定着しました。

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