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賃貸インタビュー

第七回 ゲストハウスの先駆者 オークハウス 山中武志さん

山中武志(やまなかたけし)
1951年大阪生まれ。京都大学経済学部を経て日本IBMに入社。1981年にシステム開発を手がけるACT社(アドバンスト コンピュータ テクノロジー)を設立、一時は従業員百数十人、年商11億円を越す企業に成長したものの、1992年に倒産。友人のアドバイスで外国人への短期貸しとしてゲストハウス(当時は外人ハウスという名称が一般的)を始め、1998年にはオークハウス設立。都内41ヶ所でゲストハウスを運営している。
詳細はこちらで。http://www.oakhouse.jp

こんなおんぼろアパートに住みたい人がいる!

 ビデオは駒沢通りを左折、細い路地を進んでいます。うっそうと茂った植栽の中、砂利道を進むと、いかにも古いアパートが現れました。戦後すぐに建てられたそうで、4畳半が7部屋。隙間風の入りそうなガラス窓、清潔好きな女性なら嫌な顔をしそうなシャワールーム、お世辞にもきれいなアパートとはいえません。部屋だけが単体で貸しに出されていたとしたら、家賃2万円でも借り手はつかないだろうと思います。

「この物件、あまり古いんで、リフォームなどで少しキレイにしたいんですが、いつも入居者がいるんで、逆に手を入れられないんですよ」とオークハウス社長の山中さん。

 こんなアパートに、いつも入居者がいる?

 家賃はいくらですか?

「部屋代が5万7000円、電気代を入れると6万円くらいになりますね」

 6万円!

 確かに人気の東急東横線です。急行は止まらないけれど、渋谷から3駅の祐天寺駅から歩いて数分。便利です。でも、このおんぼろ(失礼)アパートに6万円……。どうして?

ゲストハウス最大の特徴はコミュニティ

 この「?」を解き明かすためには、山中さんが手がけているゲストハウスのシステムを知る必要があります。最近、いくつかの週刊誌などで取りあげられていますから、ご存知の方もいらっしゃるでしょう。簡単に言うと、キッチンやリビングルームなど共用スペースがあり、個室にはエアコンやベッドなどがあらかじめ用意されている賃貸です。中には1部屋に何人かが住むようなタイプもあります。

 このゲストハウスが人気を集めているには、いくつかの理由があります。まずは非常に分かりやすく、公平で納得できる料金システム。同社のゲストハウスでは、入居時には3万円のデポジットを預けるだけで、礼金、敷金、手数料など、一般の賃貸で入居時に必要な費用は一切なし。預けたお金も、著しく部屋を破損させたりしていない限り、退去時には全額返却されます。保証人もいりませんし、誰でも同じ料金で、何の審査もなく、入居できるのです。

 移動が自由、身軽に入居しやすい点も人気の要因。一般の賃貸のように入居時、退去時に費用がかかりませんから、空きがあり、家賃の差額を負担すれば、どのゲストハウスにでも移れます。家具付きですから、身の回りの品だけ持てば、引っ越し完了というわけです。

 でも、これだけの特徴であれば、マンスリーマンションなどの家具付きアパートと変わりありません。

「大きく違うのはゲストハウスにはコミュニティがあるということです」と山中さん。

「日本人はコミュニティに属していることが必要なんです。高度成長期には会社にそれがあった。ところが、今では大企業にすら、コミュニティがない。社会に出て一人で暮らしていると、本当に孤立してしまい、どこにも所属できず、人と触れ合うことがない。そんな暮らしに不満を抱いている若者が多いのです」

 共用のキッチンで一緒に料理を作ったり、各種パーティーが開かれたりなど、オークハウスのゲストハウスには入居者同士が自然に触れ合えるような仕掛けがあります。

そして
「一度、コミュニティに参加、ゲストハウスの楽しみを知ってしまうと、出て行かなくなってしまうんです。参加しなくても、いつも、誰かがいるという安心感は一人暮らしにはないものですしね」。実際、日本人入居者の平均的な入居期間は数年。意外に長く住み続ける人が多いのです。

 そして、このコミュニティの存在が、建物がおんぼろでも、入居したい人を生んでいるのです。「料金自体は他の賃貸より安いわけではないのです。でも、高い家賃を払って、でも孤独な、楽しめない生活を送るより、ゲストハウスがいい。そういう人が増えているんです」

古くてOK、堅実な若者が増えている

 考えてみると、古本屋さん、古着屋さんなどが人気です。どうして、部屋だけが新築でなきゃダメと思っていたのでしょう。

「長期不況で、中古でもいいじゃないかと思う、堅実な若者が着実に増えています。就職できない人、海外放浪してきた人、語学にも外国人にも抵抗感のない人が増えています。その海外経験の中でゲストハウスを知った人も増えており、そこにも人気が集まってきた理由があります」

 景気の動向、若者の意識の変化がこのまま、続くなら、ゲストハウスはまだまだ必要になるはずです。大家さんとしては、どんな物件ならゲストハウスとして貸せるのか、気になるところです。

「今後は新築物件も考えたいと思っていますが、現状では古い物件が中心。ただ、そのまま貸すのではなく、インターネット対応、シャワールーム設置、リビングルームの整備、各室に電気メーターを付けるなどの作業をして、貸すようにしています」

 具体的な建物では借りていた法人が撤退してしまった元社員寮、中古の個人住宅、都心の中古ビルのコンバージョンなど。立地では分かりやすい地名がベストだそうですが、「どの駅から歩いても1時間近くという立地で30部屋ほどの物件があります。不便さを補うために、自転車を用意、必要なら貸し出しますよというサービスをつけました。自転車なら15分くらいで駅まで出られるんです。その結果、5万円で満室です」

 実際の運営方式では
 1.建物を借りて貸し出す
 2.建物を買って貸し出す
 3.大家さん自身がパートナーとしてゲストハウスを経営する
 4.建物を持っていない人がフランチャイズでゲストハウスを運営する
といったやり方があるとか。

 また、ビジネスとしてはもちろんですが、山中さんはゲストハウスに違う夢も持っていらっしゃいます。

「礼金・敷金がなければ、そこに住もうと、人が集まりやすい。若い才能が集まってきて、そこにコミュニケーションが生まれ、ネットワークが広がれば、街は元気づく。東京はもっと面白い場所になって行くと思いますよ」

 そのためには、と山中さん。「ゲストハウス運営は昔の長屋の大家さんのようなもの。手間はかかるけれど、それだけの意味はある。賛同してくれる大家さんがいらっしゃったら、面白いんですが」

 現在の部屋数は700。これが7000になってもいいはず。山中さん、にこっとしての断言です。

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