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賃貸インタビュー

第九回 若い年代から圧倒的支持 東京R不動産 吉里裕也さん

吉里裕也(よしざとひろや)
1972年京都生まれ。東京都立大学院工学研究科建築学専攻修了。1998年より株式会社スペースデザインにて、サービスアパートメント及びSOHOに関わる新規業態の立上げに従事するともに、プロジェクトにおける企画・監理のリーダーシップをとる。
2003年よりフリーランスとして、website「東京R不動産」を立ち上げるとともに、集合住宅・オフィス・店舗等の企画、デザインを行う。2004年 SPEAC inc.を共同設立。

 若い友人たちと住まいの話をすると必ず出てくるのは東京R不動産なるウエブサイト。不動産会社風の名称ではありませんが、れっきとした不動産会社(社名はスピーク)。しかも、この会社で取り扱っている物件、ホームページの面白さといったら……。若い世代に支持される、その理由を伺いにいきました。

「自分で借りたい家がない」がサイト設立のきっかけ

 メンバー5人のうち、4人が建築設計関係の専門家という東京R不動産。建築、住まいのプロとして「自分たちが借りたい家がないというのが、この仕事を始めるきっかけでした」と吉里さん。

 さらに「デベロッパーにいたので、いろいろな物件を知っています。古くても味のあるいい物件があるのに、大家さんや不動産会社はその良さを分かっていない。一方でデザイン・企画として面白い物件も増えているのに、こちらも現状の賃貸物件の流通の中でうまく紹介されていない。その、モノの良さ、企画の良さを伝えるために、自分たちで何かやってみよう、と」。

 スタートは一昨年11月に行われたアートイベント。古い建物をイベント期間中ギャラリーとして借りることになり、いくつかの物件が集まったそうです。ちょうど、その少し前から「古くても味のある部屋、改装できる部屋を探している」という相談を受けることが多かったこともあり、じゃあ、物件を紹介しようとサイトを立ち上げたのですが、その時点では、物件はわずか12〜13物件。仲介はまだしておらず、商売抜き、単に物件を紹介するだけでした。

 ところが、借りたいという人が想像を超えた勢いで増加。これは面白いかもしれないと昨年4月からは会社として仲介を行うようになったそうです。

「当初はReal Tokyo東京という、アート版ぴあのようなサイトとリンクしていたので、借り手はアーティスト、クリエーター系や学生が多かったのですが、今では同じクリエイティブ系でも大手代理店の制作部門や普通の会社員などに広がっています」

ニーズはあるのに、物件がない!

 その頃から、今に至るまで、大変なのは物件集め。「ニーズはあるのですが、物件がないという状態が続いています」

 最初の頃は1週間に1物件紹介するのがやっと。しかも、担当者が自転車で街でみかけた物件や古そうな地元の不動産を回って集めていたそうですが、けんもほろろな対応ばかり。今でも「1年以上空いていた部屋を『こんなのでいいの?』と大家さんに言われながら紹介、1週間で10人以上が見に来た」などの実績から、週に数物件はアップされ、サイトに掲載されている物件は300を超える数になっていますが、それでも慢性的に足りない状態です。

 では、実際、どんな物件が掲載されているのでしょう。ホームページの物件検索の見出しをみると、「レトロな味わい」「改装OK」「お得なワケあり」「オマケ付き」など、他の不動産会社の検索条件にはまずない文言が並んでいます。

 次に実際の物件紹介のページ。物件の見出しは「興奮!これぞ地下」「気力・体力・時の運」「広尾のちょこんとアパートメント」……。こちらも、ここでしか見られないコピーです。

 そして、物件紹介記事。「おトクなワケ有りの理由は日当たりです。日当たりを気になさらない方にとってはかなりお勧め物件です」「平成18年に取り壊す予定なので、何をやってもOKです」……。かなり手を入れなければ住めない、エアコンは付けられないなど、デメリットも具体的に書き込まれています。さらに、もう埋まってしまった物件も、ただし書きはあるものの、そのまま掲載されており、ライブ感たっぷりです。

 写真を見ると、タイル張りの古いお風呂があったり、不思議なたたずまいの庭があったり……。一般の不動産会社だと、とりあえずリビングの写真と考えますが、ここではその物件の魅力を伝える写真です。

「不動産選びには様々な情報が必要なのに、今の流通の中では開示されている情報が少ない。さらに、この部屋はこんな使い方に向いていますよといったコンサルティング的要素もない」。その不足を補うのが、このページというわけです。

 扱っている地域は主に中央区、港区、千代田区といった都心部に加えて、目黒区、渋谷区といった山手線の西側エリア。地方都市から取り扱ってほしいという要望もあるそうですが、上記のような紹介をしたり、必ず下見をしてもらうためには人手が足りないという理由で今のところ地域は限られています。

 数として多いのは古い物件ですが、この説明が難しい。東京R不動産独自の選択眼に叶わないと、単に古い、ではダメなのです。「清潔感は大事。水回り、共有部分はきれいでないと」に加え、年月を経た味わいとでも言うのでしょうか、いわく言いがたい風情。軽量鉄骨造のアパートが少ないこと、ワンルームは扱わないというポリシーから類推、実際のページで確認していただくしかありません。

ひとつ、他にないポイントがあれば借りたい人は現れる

 ところで、古い物件ならとりあえず、リフォームと思いますが、吉里さんは疑問を投げかけます。

「いくらリフォームしても新築にはかなわない。それに、賃貸は期間限定で住むので、多少不便があっても、ひとつ、他にないポイントがあればいいんです」

 古さを生かす、一戸しかないメリットを生かす手段。具体的には「庭に桜を植えて、1年のうち1週間だけだけど、我が家で花見ができるようにする、大きな窓を作る、縁側を付ける……。リフォームするにしても、大家が100万円かけて勝手にやるより、古いまま貸してリフォーム可としたほうが付加価値になることも」

 とはいえ、一般的な部屋を探している人に比べると、リフォーム可を探している人は全体としてはまだまだ少数派。そこで、吉里さんは大家さんに「1ヶ月だけ、そのままで掲載してみましょう。それでダメならリフォームしましょう」と提案するのだとか。仲介だけでなく、物件のデザインや企画ができる会社ならではの強みです。もちろん、リフォーム可を条件に仲介するときには、内容に応じて細かく契約書を作り、後日トラブルにならないような配慮もします。

 また、「ウチの物件は地域限定で探している人向きでないので、とりあえず、地元の不動産会社に出してみて、それで借り手が見つからないようなら広域で探してみましょう」という提案も。ホームページでの掲載は無料で「専任をやろうとはしない」、成約ベースで報酬をもらうのが基本的な姿勢です。

「でも、いくら無料でもネットに載せるのはいやだという大家さんがいるのが理解できません」。

 大家さん業は借りる人があって初めて成り立つもの。であれば、自分の物件を広く知ってもらうために、利用できるものは何でも利用したい。さらに、今、どんな部屋を借りたい人がいるのかを確実に知っておくために、東京R不動産は要チェック!

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